はかなくて、日来多く過ぎ行くに、かく隔てなき様にと聞き給へど、いかなる事ぞなども思し驚かず、「いとよくうち語らひておはせ」とのみ聞え給へば、いとどいかでか隔てもあらん。さりとて身をば変へぬものから、かくてあるべきならず。
あっという間に、数日が過ぎて、吉野の宮は女房どもから中納言【姫君】が大君【吉野の大君】と親しくしていることを聞かれましたが、何の問題もなかろうと驚きもせず、「親しくすることは結構なこと」と申したので、ますます親密になっていきました。とはいえ出家した身ではありませんでしたので、実は女といえども男の姿で姫君【吉野の大君】の許へ通い詰めるのもどうかと思うようになりました。
(続く)