大将軍宇文会、天の下並びなき兵にて、力の妙、身の足れる事、世の常の人に似ず。その名を聞きてだに、震ひ恐れぬ人なし。後ろに敵を得たれども、驚き恐るる心なし。進む方の先に立ちたれば、防ぐ軍に遭ひて、独孤栄を見付くるままに、飛ぶが如くに馳せ合ひて、その身を引き寄せて、言問はず首を打ち落とすを見て、また向かはむとする者なし。
大将軍宇文会は、天下に並びない兵でした、力の妙([不思議なほどに勝れている様])、身体つきは、世の常の人にありませんでした。その名を聞いただけで、震え恐れをなさぬ人はいませんでした。後ろから敵が攻めて来ても、驚き恐れることはありませんでした。進む軍の先陣に立ち、防ぐ軍兵と当たりましたが、独孤栄(竜武大将軍)を見付けるやいなや、まるで飛ぶように馳せ向かい、独孤栄を引っ捕らまえると、言葉も発する間もなく首を打ち落としたのでこれを見て、宇文会に挑みかかる者はいませんでした。
(続く)