中務の御子も、土佐におはしまし着きて、御送りの武士に賜はせける。
思ひきや 恨めしかりし 武士の 名残りを今日は 慕ふべしとは
かやうの
類、
数多聞こえしかど、何かはさのみ。皆人もゆかしからず思さるらんとてなん。
中務の宮(第九十六代後醍醐天皇の第一皇子、尊良親王 )も、土佐国にお着きになられて、見送りの武士に歌を贈りました。
恨めしく思っていた武士たちであるが、別れともなると、さすがに恋しく思うものだな。
このような話を、たくさん聞いたものでございますが、本当のところどうでございましたか。人は皆そのような話が好きでございますれば。
(続く)