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Santa Lab's Blog


「増鏡」久米の佐良山(その30)

佐々木の佐渡の判官入道伴ひてぞ下りける。逢坂あふさかの関にて、

返るべき 時しなければ これやこの 行くを限りの 逢坂の関

柏原かしはばらと言ふ所にしばし休らいて、あづかりの入道、先づあづまへ人を遣はしたるかへり事待つなるべし。そのほど、物語など情け情けしううち言ひ交はして、『何事もしかるべきさきの世の報ひに侍るべし。御身一つにしもあらぬ身なれば、まして甲斐かひなきわざにこそ。かくたけいへまれて、弓矢取るわざにかかづらひ侍るのみ、憂きものに侍りけれ』など、まほならねどほのめかすに、心得果てられぬ。




佐々木佐渡判官入道(佐々木道誉だうよ)が具行ともゆき(北畠具行)に付き添って東国に下ったのでございます。逢坂の関(現滋賀県大津市にあった関)で具行は、

再び帰ることのない旅ならば、この逢坂の関を通るのも、今が限りぞ。

柏原(現滋賀県米原市)という所にしばらく留まって、預かり([罪人などを預かって監視したり世話をしたりする者])の入道(道誉)は、まず東国に使いを遣って返事を待つことにしました。その頃、具行は道誉と物語などを親密に交わして、『何事も前世の報いを受けるものよ。この身ひとつのことではないのだから、仕方のないことである。今こうして剛の家(武家)に生まれて、弓矢を取ることになったことを、残念に思う』などと、直接申すことはなけれどほのめかして、思い切れない様子でございました。


続く


by santalab | 2014-11-10 09:01 | 増鏡

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