人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Santa Lab's Blog


「増鏡」久米の佐良山(その35)

また元亨げんかうの乱れの初めに流されし資朝すけともの中納言をも、いまだ佐渡の島にしづみつるを、このほどのついでに、かしこにて失なふべき由、あづかりの武士におほせければ、この由を知らせけるに、思ひまうけたる由言ひて、都に止めける子の許に、あはれなる文書きて、預けけり。すでに斬られける時のじゆとぞ聞き侍りし。

四大本無主 五蘊本来空 将頭傾白刃 但如鑚夏風

いと哀れにぞ侍りける。




また元亨の乱れ(元亨四年(1324)に起こった正中しやうちゆうの変)で流された資朝中納言(日野資朝)は、まだ佐渡島におりましたが、このついでに、かの地で誅すべしと、預かりの武士に命が下りましたので、これを知らせると、かねてより思っていたことと答えて、都に止め置かれた子の許に、悲しみの文を書いて、武士に預けたのでございました。資朝中納言が斬られる間際に言い残された頌([詩句])とお聞きしております。

四大([人間の肉体])というものはそもそも移し身(空蝉)に過ぎず、五蘊([存在を構成する五つの要素])が存在しないようにわたしもなかったのだ。頭を白刃([鞘から抜いた刀])の前に差し出せば、ただ夏風を切るように振り下ろされるだけのこと。

たいそう悲しい言葉でございました。


続く


by santalab | 2014-11-15 08:21 | 増鏡

<< 「増鏡」内野の雪(その18)      「増鏡」内野の雪(その17) >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧