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「太平記」足利殿御上洛事(その4)

相摸入道にふだうこれに不審を散じて喜悦の思ひを成し、高氏たかうぢ招請せうしやうあつて、様々賞翫しやうぐわんどもありしに、「御先祖累代るゐたい白旗しらはたあり、これは八幡殿より代々の家督に伝へて被執重宝ちようはうにてさふらひけるを、故頼朝きやうの後室、二位にゐの禅尼相伝さうでんして、当家たうけに今まで所持候ふなり。希代きたいの重宝とまうしながら、於他家に、無其詮候ふか。これを今度の餞送はなむけしんじ候ふなり。この旗を差せて、凶徒きようとを急ぎ御退治たいぢ候へ」とて、錦の袋に入れながら、自らこれを参らせらる。そのほか乗り替への御為にとて、うたる馬に白鞍置いて十疋じつびき白覆輪しろぶくりんよろひ十領じふりやう黄金作こがねづくりの太刀一つ副へて被引たりけり。足利殿御兄弟きやうだい吉良きら・上杉・仁木につき・細川・今川・荒川あらかは以下いげの御一族三十二人さんじふににん高家かうけ一類いちるゐ四十三人、都合その勢三千余騎、元弘三年三月二十七日にじふしちにちに鎌倉を立ち、大手の大将と被定、名越なごや尾張をはりのかみ高家たかいへに三日先立つて、四月十六日に京都に着き給ふ。




相摸入道(北条高時たかとき)はこれによって不審は晴れよろこんで、高氏(足利高氏)を招いて、様々の遊びをして、「ご先祖より代々伝わる白旗(源氏の旗印)があります、これは八幡殿(源義家よしいへ)より代々の家督に伝えて家督([嫡子])に取らせた重宝でございます、故頼朝卿(源頼朝)の後室、二位禅尼(北条政子)が相伝して、当家(北条氏)が今まで所持しておりました。希代の重宝ではございますが、他家にとりましては、価値のないものでございましょう。これを今度の餞別に贈ります。この旗を上げて、凶徒を急ぎ退治なさいませ」と申して、錦の袋に入れながら、みずからこれを渡しました。そのほか乗り替えのためにと申して、飼っている馬に白鞍([鞍の前輪まえわ後輪しづわの表面を銀で張り包んだもの])を置いて十匹、白覆輪([銀覆輪]=[銀または銀色の金属を用いて飾ったもの])の鎧十領、黄金作りの太刀([太刀の金具を金銅づくりにしたもの])一つ添えて贈りました。足利殿の兄弟・吉良(吉良貞義さだよし)・上杉(上杉憲房のりふさ)・仁木(仁木頼章よりあき義長よしなが)・細川(細川頼春よりはる)・今川(今川頼貞よりさだ)・荒川(荒川詮頼あきより)以下の一族三十二人、高家([格式の高い家])の一類([一族])四十三人、都合その勢三千騎余りは、元弘三年(1333)三月二十七日に鎌倉を立ち、大手の大将として、名越尾張守高家(名越高家)に三日先き立ち、四月十六日に京都に着きました。


続く


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by santalab | 2014-11-27 12:46 | 太平記 | Comments(0)

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