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「宇津保物語」藤原の君(その27)

また、せまれたる大学のの言ふやう、「あはれ、ふみに言へるやうは、『得難き女を得むとせむやうは、世界に、不屑ふせう、整はず、家、かまどなくして、便りなからむ人、道のことにきては、職事しきじにも入り、登省とうざうし、及第きふだいし、学問れう賜はり、かく返す返す、物はついでを越さず出で立つべきものなり、しかあるを、ざえある者は沈め、無才のをとこは先に立つ、かくの如き人の嘆きを除き給はば、人の嘆き、願ひ満つべし』となむ、文書もんじょに言へる。まことに、しかある物なり」。親王の君、「まことに、しかあるべき物なり。数多あまたの人の喜びをなさむに、我が一つの願ひ満たじやは」とのたまひて、道の人の沈める才をば、朝廷おほやけにも申し、博士はかせどもに仰せ、「家所なく、食物なき人のために」とて、銭、きぬ、米、車に積みて出だし立て給ふ。つかさ得べき人の沈みたるを求めさせ給ひて、我が御さうは皆賜ふ。




また、生活に窮し世間に疎い大学の者たち(官僚候補生)が言うには、「そうですね、書物に書いてあるには、『手に入れがたい女をものにしようとするのは、世の中で、必要な物も、揃えられず、家や、かまどもなく、頼る人もいない者が、学問の道で、職を得て、試験に受かり、及第し、学問料をいただき、これを繰り返して、順を追って出世していくようなものだと、けれども世の中では、才能のある者をさし置いて、無才の者が先に出世していきます、このような立場にある者の嘆きを取り除けば、あなたの嘆きも、願いが叶うにちがいありません』と、文書に書いてあります。本当に、そうあるべきです」。上野の宮は、「まこと、そうであるべきであろう。多くの者たちに喜びを与えなくては、わしのただ一つの願いも叶わない」と申して、陽の目を見ない才能を持つ者を、朝廷にも推挙して、博士(文章博士、教授ですね)にも命じて、「住むところもなく、食べ物もない者たちのために」と、金銭、着物、米を、車に積んで送りました。本来官職を得るはずの不遇の者たちを探させて、上野の宮の荘園もみんなその者たちに与えました。


続く


by santalab | 2015-01-13 20:22 | 宇津保物語

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