かたく封ぜられて、「清まはり、静かなる所で、開けらるべき」由を書き付けたる鏡なれば、この御祈りに事付けて、修法などせさせ給ふとて、寺に籠もり給へるついでにぞ、この鏡を開けたれば、見し世は定かに映りけり。
かたく閉じられて、「神聖で、人のいない所で、開けてください」と書き付けられた鏡でしたので、弁中将は華陽公主の安産の祈祷のついでに、修法([除災、招福などを目的 として、密教で実修される行法。加持祈祷])を行うために、寺に籠もりましたが、この鏡を開けてみると、かの国の后の姿がはっきりと映っていました。
(続く)