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「宇津保物語」藤原の君(その33)

かくて、この寺には、今日の色節いろふしにて、怪しからぬ、いと多かり。遊びの所には、嵯峨の院の牛飼ひ、講説かうぜちの所には、講説のをさがくとては、つづみ打ちて遊びす、講説とては、こしきする真似をす。かかるほどに、大将殿の御車、御前三十人ばかりして立ちぬ。親王みこの君、「しそしつ」とて仰すやう、「講説始めよ」とのたまへば、牛飼辻遊びす。老僧らうそうども、集まりて、声を合はせて罵れば、物見に来たる人々、いとほしくもあり、をかしくもあり。博打ばくち、京童部わらはべ、数知らず集まりて、一の車をひ取る。殿の人々空騒ぎすれば、車のすだれを掲げてのたまふ、「奪ひ得つ。これやこの、惜しみ給ふ御娘みむすめ。なめき罪ぞはからるる。おろそかなる罪ぞれうぜらるる。双六すごろくの主たち」と言ひて、牛飼ひども、田鼓たつづみども打ちて、草刈笛吹く。




こうして、この寺(とうりう寺)には、今日の行事を見ようと、並々ならないほど、多くの人が集まりました。遊びの場所には、嵯峨院(先帝)の牛飼い(牛飼童、牛車を進ませる係らしい)が、講説([説法])の場所には、講説の長が、楽士たちは、鼓を打ちました、講説は、昔風でした([こしき]=[古式]?)。そうこうしていると、左大将の車が、三十人ほどを先頭に付けてやってきました。上野の宮は、「うまくやったぞ([しそしつ]=[為過しつ])」と言って、「講説を始めよ」と言ったので、牛飼いは辻遊び(野外で踊ったりして遊ぶことでしょうか)を始めました。老僧たちが、集まって、声を合わせて大声で経を読んだので、見物に来た人たちは、とてもありがたそうに、趣深く聞いていました。そこへ、博打(やくざ?)、京童部(ちんぴら?)たちが、数知れないほど集まってきて、左大将の先頭の車を奪い取りました。左大将の供の者たちが騒ぎたてると、京童部たちは車の簾(今のカーテン)を上げて言うには、「奪い取ったぞ。この娘があの、左大将が大切にしている娘だ。これも無礼をはたらいた罪により左大将を騙した結果よ。上野の宮を軽んじるからこのような罰に会うのだ。そうだろう博打たち」と言うと、牛飼いたちは、田鼓(田楽に用いる鼓らしい。肩にのせるのではなく腰につけてたたくそうな)を打って、草刈笛(あの牛若丸が持っていたのが草刈笛らしい。ということは横笛)を吹きました。


続く


by santalab | 2015-03-08 17:15 | 宇津保物語

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