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「曽我物語」杵臼・程嬰が事(その7)

その後、程嬰ていえいかたきわうのあたりに行き、「召し使はれむ」とまうす。敵王てきわう聞き、この者、身を捨て、おもてよごし、我に使ふべき臣下にあらず、さりながら、世変はり、時移れば、さもやと思ひ、かたはらに許し置くとはいへども、なほ害心に恐れて、許す心なかりけり。言ひ合はせたる事なれば、「我、今、君王くんわうに仕へて、二心ふたごころなし。疑ひことわりなれども、世界をせばめられ、恥辱に代へて、助かるなり。なほし、用ひ給はずは、主君の太子、臣下の杵臼しよきう諸ともに、隠れたる所を、くはしく知れり。討つ手を賜はつて向かひ、彼らを討ち、首を捕りて見せまゐらせん」と言ふ。




その後、程嬰は、敵の王の許へ行き、「仕えたいのです」と申しました。敵王はこれを聞いて、この者は、身を捨てて、恥を晒して、わたしに仕えるような者ではない、とは言え、世は変わり、時が移った今、もしやと思い、側に置くことにしましたが、なお害心([害を加えようとする心])を恐れて、気を許すことはありませんでした。申し合わせたことでしたので、「わたしは、今は、君王に仕える身です、二心([味方や主君に背く心])はございません。疑いを持たれるのは当然のことですが、隠れ住む所もなく、恥辱に甘んじて、命を助かることにしたのです。それでも、信じられぬと申すのなら、主君の太子、臣下の杵臼諸ともに、隠れている場所を、詳しく知っております。討手を賜わり向かって、彼らを討ち、首を捕ってお見せしましょう」と申しました。


続く


by santalab | 2015-03-21 08:07 | 曽我物語

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