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「曽我物語」鞠子川の事(その4)

五朗また、引き下がりくどきけるは、「人界にんがいしやうを受くる者、誰かは後の名残りしからでさうらふべき。鬼王おにわう道三郎だうざぶらうが心をも、御兼ね候へかし。彼らをば、曽我へかへし候ふべし。この事叶ひて候はば、まうすに及ばず。し損ずるものならば、この人々が、ここにて歌を詠み、かしこにては詩を詠じて、しもたてぬ事なんどあざけらんも、口惜くちをし。如何ばかりとか思し召し候ふ」とまうしければ、に責められて、その後、歌をも詠まず、横目をもせで、打ちけるほどに、大崩くづれにこそ着きけれ。




五朗(曽我時致ときむね)はまた、馬を引き下げて申すには、「人界に生を受けた者、誰が後の名残りを惜しまぬ者がありましょう。鬼王・道三郎の気持ちを、察しなさいませ。彼らは、曽我へ帰しましょう。仇討ちが叶えば、それでよいではありませんか。もしもし損ずることがあれば、この者たちに、ここで歌を詠み、かしこでは詩を詠じて、しもたてぬ(仕損じ給ひぬる)などと嘲られては、残念なこととは思いませんか。どうでしょう」と申せば、十郎(曽我祐成すけなり)も道理に責められて、その後は、歌も詠まず、横目を向けることもなく、鞭を打つほどに、大崩(現神奈川県足柄下郡箱根町にある箱根駒ヶ岳)に着きました。


続く


by santalab | 2015-04-16 09:18 | 曽我物語

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