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「曽我物語」同じく相撲の事(その14)

兵衛佐ひやうゑのすけ殿、この由御覧じ、「如何に頼朝が情け捨てて、あたを結び給ふか。大庭おほばの人々」とおほせられければ、大庭の平太へいだうけたまはり、「田舎ゐなか住まひの者ども、出仕馴れさうらはで、斯かる狼藉らうぜきを仕り候ふ。相撲すまふは負けても、はぢならず、我が方人かたうどは言ふべからず、一々にしるまうすべきぞ。後日に争ふな」と怒りければ、大庭のしづめ給ふうへはとて、鎮まりけり。伊東は、もとより意趣なしとて、やがて面々にこそ鎮まりけれ。これや、瓊瑶けいようは少なきを以つて奇なりとし、磧礫せきれきおほきを以つていやしとす。人多しといへども、景信かげのぶが言葉一つにてぞ、鎮まりける。




兵衛佐殿(源頼朝)は、これを見て、「なぜにこの頼朝の情け捨てて、争い合うのだ。大庭の人々よ」と申せば、大庭平太(大庭景義かげよし)はこれを聞いて、「田舎住まいの者ども故、出仕に馴れておらず、このような狼藉を働きました。相撲は負けても、恥ではございません、我が方人([味方])は申すまでもなく、一々に詫び申すべきであるぞ。後日に争うことのなきよう」と怒ったので、大庭(景義)が事を鎮める上はと、騒動は鎮まりました。伊東(伊東祐親すけちか)も、もとより意趣([恨み])はないと申したので、やがて面々も鎮まりました。これは、瓊瑶([美しい玉])は数少ないからこそ珍重され、磧礫([石ころ])はどにでもあれば大事にされない。人は多くいるといえども、景信(景義)の言葉一言で、皆鎮まりました。


続く


by santalab | 2015-04-19 07:23 | 曽我物語

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