人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Santa Lab's Blog


「曽我物語」三井寺大師の事(その9)

然れば、仏は、衆生しゆじやう善悪隔てなき由、説き置かせおはしますものを。さあらば、親と成り、子と成り、師と成り、弟子と成り、これ皆一心のぐわんに依り、山河大事、ことごとく阿字あじの一字にこそをさまりてさうらへ」と怒りければ、母、控へたる袖を少し許しけるところに、棄恩入無為きおんにふむゐ、真実報恩者はうおんしやことわりをつぶさに説きければ、母、涙を抑へて、「然らば」とて、許しけり。証空しようくう嬉しくて、急ぎばうかへりけり。孝行かうかうのほどぞ頼もしき。




なれば、仏は、衆生を善悪隔てなく救済されると、説いておられます。そういうことですから、親となり、子となり、師となり、弟子となるのも、皆一心の願に依るもの、山河大事(山河大地?)は、すべて阿字([梵語字母の第一。密教ではこの字に特殊な意義を認め、宇宙万有を含むと説く])の一字に込められているのです」と力説すると、母は、握りしめた袖の手を少し緩めました、証空は棄恩入無為([僧侶が出家するとき、俗世間を捨てて仏弟子になる心を表明するために髪を剃り、円頂になること])、真実報恩者(『流転三界中 恩愛不能断 棄恩入無為 真実報恩者』。出家する時に唱える偈文らしい)の理を詳しく説きました、母は、涙を抑えて、「ならば」と申して、許しました。証空はうれしくて、急ぎ僧坊に帰りました。証空の孝行は頼もしいものでした。


続く


by santalab | 2015-04-19 14:35 | 曽我物語

<< 「曽我物語」三井寺大師の事(そ...      「曽我物語」三井寺大師の事(その8) >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧