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「曽我物語」李将軍が事(その4)

女房にようばう怪しみて、『将軍しやうぐん、虎に喰はれけるや』と問へば、りゆう、涙を流し、膝をり、泣けども叶はず。我が胎内の子は、父を害する敵なり、生まれ落ちなば捨てんと、日数ひかずを待つところに、月日に関守なければ、程なく生まれぬ。見なれば男子なんしなり。いつしか、捨つべき事を忘れ、取り上げ、名をかふりよくと付けて、もてなしけり。名将軍めいしやうぐんの子にて、胎内より、父虎に喰はれけるを、安からずに思ひ、かたき取るべき事をぞ思ひける。




女房は怪しんで、『将軍は、虎に喰われてしまったのですか』と訊ねると、雲上龍は、涙を流し、膝を折って、泣きましたがどうしようもありませんでした。女房の胎内の子は、父を殺した敵です、生まれ落ちたならば捨てようと、日数を待ちましたが、月日に関守なければ、ほどなくして子は生まれました。見れば男の子でした。いつしか、捨てることを忘れ、子を取り上げて、名をかふりよく(李敢?)と付けて、かわいがりました。名将軍の子でしたので、胎内より、父が虎に喰われたことを、無念に思い、敵を取ろうと思っていました。


続く


by santalab | 2015-04-25 16:42 | 曽我物語

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