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「曽我物語」大磯の盃論の事(その1)

さても、十郎じふらう祐成すけなりは、三浦より曽我へかへりけるが、定めなき浮き世の習ひ、つくづくと案ずるに、明日みやうにち富士野に打ち出でて、帰らん事は不定ふぢやうなり、この三四年情けを懸けて浅からぬ虎にいとま請はんとて、宿河原しゆくがわら松井田まつゐだまうす所より、大磯おほいそにこそ行きにけれ。折節をりふし、鎌倉殿召しに従ひて、近国の大名だいみやう小名せうみやう、打ち連れてとほりけり。十郎、虎が宿所に立ち寄りてありけるが、心を変へて思ひけるは、国々のさぶらひおほく通る折節、流れを断つる遊び者、我ならぬ情けもやと、心にふしが思はれて、暫く駒を控へつつ、内のていをぞ聞きたり。




さて、十郎祐成(曽我祐成)は、三浦より曽我へ帰っていましたが、定めなき浮き世の習い、よくよく思えば、明日富士野に打ち出れば、再び帰れるかどうか、この三四年情けを懸けて浅からぬ虎(虎御前。大磯の遊女)に別れを告げようと、宿河原(現神奈川県川崎市)・松井田(?)と言う所を通り、大磯(現神奈川県中郡大磯町)に向かいました。ちょうどその時、鎌倉殿(源頼朝)に呼ばれた、近国の大名小名が、打ち連れて通るところでした。十郎(祐成)は、虎御前の宿所に立ち寄っていましたが、気が変わり思うには、国々の待が多く通る折節、その場限りの遊び者([遊女])なれば、我以外に情けを掛ける者があるやと、疑いを思えて、しばし駒を止めて、内の様子を窺いました。


続く


by santalab | 2015-05-09 08:33 | 曽我物語

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