人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Santa Lab's Blog


「曽我物語」比叡山の始まりの事(その1)

昔を思ふに、天地既に分かち、国未だ定まらざる時は、人寿にんじゆ二万ざいを保ちける。迦葉かせう尊者は、西天さいてんに出世し給ふ。大聖だいしやう釈尊は、その教義けうぎを得て、"都率天とそつてんぢゆうし給ふ。「我、八相成道はつさうじやうだうの後、遺教ゆいけう流布の地、いづれの所にかあるべき」と、この南閻浮洲なんえんぶしうをあまねく飛行ひぎやうして御覧じけるに、遠々ゑんゑんたる大海だいかいの上に、「一切衆生しゆじやう悉有仏生しつうぶつしやう、如来常住じやうぢゆう無有変易むうへんい」。立つ波の声あり。この波の止まらん所、 一つの国と成りて、我、仏性ぶつしやうを広めつうずべき霊地たるべし」とて、遙かの十万里の滄海さうかいを凌ぎて行くに、あしの葉一つ浮かみたる所に、この波流れ止まりぬ、今の比叡山ひえいさんの麓、大宮おほみや権現のまします波止土濃はしどのこれなり。然ればにや、「波止まり、土細やかなり」と書けり。




昔を思えば、天地を分けず、国土が定まらない時代には、人の寿命は二万歳でした。迦葉尊者([釈迦十大弟子の一人。頭陀第一 ])は、西天([西方浄土。極楽])に出世([諸仏が衆生救済のためにこの世界に姿を現すこと])されました。大聖釈尊(釈迦)は、その教義を得て、都率天([欲界における六欲天の第四の天部])に住んでおられました。「わたしは、八相成道([釈迦八相]=[釈迦が一生涯に経た八つの重要な段階。降兜率ごうとそつ托胎たくたい・出胎・出家・降魔がうま・成道・転法輪・入滅の八つの相])の後、遺教([昔の人の残した教え])流布の地を、いずれの地にすべきか」と、この南閻浮洲([南閻浮提]=[須弥山の南方の海上にあるという島の名])を隈なく飛行してご覧になられました、遥か遠く大海の上から、「一切衆生、一人残らず仏生あり、如来=仏の本体。が常住し、変わることなし」。と立つ波の声がしました。この波が打ち寄せる所、一国と成り、わたしが、仏性を広めるべき霊地となるであろう」と申して、遙かの十万里の滄海([あおあおとした広い海])を進み行くと、葦の葉が一つ浮かぶ所で、波の流れが止まっていました、今の比叡山の麓、大宮権現(山王権現)のおられる波止土濃(現京都市下京区波止土濃町)です。波止土濃は、「波止まり、土細やか」と書きます。


続く


by santalab | 2015-05-16 16:28 | 曽我物語

<< 「曽我物語」比叡山の始まりの事...      「曽我物語」山彦山にての事(その4) >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧