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「曽我物語」玄宗皇帝の事(その2)

時に、雲海沈々ちんちんとして、洞天とうてんに日暮れなんとす。悄然せうぜんとして、待つところに、玉妃ぎよくひ出で給ふ。これ、すなは楊貴妃やうきひなり。右左みぎひだりをんな七八人。方士はうじいつして、皇帝くわうてい安寧を問ふ。方士、細かに答ふ。言ひはりて、玉妃、しるしとや、かんざしを分きて、方士にぶ。その時、方士、「これは、世の常にある物なり。支証に立たず。叡覧に備へ奉らんに、如何なる密契かありし」。




その時、雲海沈々([物音がなく静かな様。特に夜が静かに更けてゆく様])として、洞天([奥深い場所。婦人の部屋])に日は暮れようとしていました。悄然([ひっそりして寂しい様])として、待つところに、玉妃が出て来ました。これが、楊貴妃でした。右左には女が七八人。方士([中国古代の方術=仙人の使う霊妙な術。を行なった人])は揖([両手を胸の前で組み合わせて礼をする])すると、楊貴妃は皇帝の安寧([無事でやすらかなこと。特に、世の中が穏やかで安定していること])を訊ねました。方士は、詳しく答えました。方士が言い終わると、玉妃は、会った証拠として、簪を抜いて、方士に与えました。その時、方士は、「これは、世に普通にあるものです。支証([裏づけとなる証拠])にはなりません。叡覧に望んで、何か密契([秘密に結んだ約束])はございませんか」。


続く


by santalab | 2015-05-24 08:05 | 曽我物語

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