これらを始めとして、兄弟二人が、手に掛けて、五十余人ぞ斬られける。手負ふ者は、三百八十余人なり。数々出づる松明も、一度消えて、元の闇にぞなりにける。人は多くありけれども、この人々の気色を見て、ここかしこに叢立ちて、寄する者こそなかりけれ。
これらの者どもをはじめ、兄弟二人(曽我祐成・時致)の、手にかかり、五十余人が斬られました。疵を負うものは、三百八十余人でした。数々灯した松明も、あっという間に消えて、元の闇になりました。人は多くいましたが、この兄弟の威勢を見て、あちらこちらに控えて、近寄る者はありませんでした。
(続く)