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「曽我物語」五朗と源太と喧嘩の事(その4)

「あの冠者くわんじやばらは、義盛よしもりが内の者にてさうらふ。奇怪きくわいなり。罷りし去れ」と怒られければ、この人々、死にたきところにてあらざれば、かたはらにこそ忍びけれ。源太げんだは、その後、駒打ち寄せ、大方おほかたに色代して、互ひに館へぞかへりにける。「さても、源太がいきほひは如何に」。五朗ごらう聞きて、「鬼神なりとも、御首は、危ふくこそ思えしか」。十郎じふらう聞きて、「身に思ひだになくは、言ふに及ばず。心の物にかかりては、如何いかでか然様さやうの事あるべき。源太討たん事は、いと安し。我らが命も生き難し。さては、梶原かぢはらを討たんとて、心を尽くしけるか。向後きやうこうは、心得給ひて、身をたばひ、命をまつたくして、心を遂げ給ふべし。かへす返す」と言ひながら、夜更くるまでぞ、たりける。




「あの冠者どもは、義盛(和田義盛)の身内の者でございます。無礼である。ここを去れ」と怒ったので、この人々(曽我祐成すけなり時致ときむね)は、死にたいとは思いませんでしたので、義盛の後ろに下がりました。源太(梶原景季かげすゑ)は、その後、駒を打ち寄せ、そこそこに挨拶して、互いに館へ帰って行きました。「それにしても、源太の奢りはどういうことか」。五朗(時致)はこれを聞いて、「たとえ鬼神であろうと、首は、危うく思えましたが」。十郎(祐成)はこれを聞いて、「身に思いがなければ、言うまでもないこと。本懐あればこそ、どうしてこのようなことをするものか。源太を討つことは、とても容易いことよ。我らの命もそれまでだが。さては、梶原(景季)を討とうと、思っていたか。この後は、よくよく心得て、身を大事にし、命をまっとうして、本望を遂げることぞ。返す返す念じよ」と申して、夜が更けるまで、語り合いました。


続く


by santalab | 2015-06-29 19:44 | 曽我物語

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