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「曽我物語」曽我にて虎が名残り惜しみし事(その11)

頃さへ、五月の短か夜の有明なれば、よひの間の、待たるるほどもなければや、出づると見れば、そのままに、かたぶく空も恨めし、八こゑと言ふも、にはとりの、夜や知りふると明け安く、夢見るほども微睡まどろまで、東にたなびく横雲の、東雲しののめ白む浮き枕、また睦言むつごとの尽きなくに、後朝きぬぎぬに成る曉の、涙に床も浮きぬべし。互ひの名残り、心のうち、さこそと思ひ知られたれ。




頃は、五月の短か夜の有明([陰暦十六夜以後、月がまだ空に残っていながら夜が明けようとする頃])でした、宵の間の、月を待つほども時の間に過ぎて、月が出たと思えば、あっという間に、傾く空も恨めしく、八声([夜の明け方にしばしば鳴く鶏の声])と言う、鶏の声が、夜が明けると知らせて、夢見るほども微睡まず、東にたなびく横雲の、東雲に白む浮き枕([涙で浮いた枕])、まだ睦言([男女の寝室での語らい])の尽きないうちに、後朝([男女がともに寝た翌朝])になる曉の、涙に床も浮くようでした。互いの名残り、心の内が、思い遣られました。


続く


by santalab | 2015-09-13 10:11 | 曽我物語

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