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「増鏡」草枕(その15)

さて御方々御台などまゐりて、昼つ方また御対面どもあり。宮はいと恥づかしうわりなく思されて、「いかで見え奉らんずらん」と思し休らへど、女院などの御気色のいとなつかしきに、聞こえかへさひ給ふべきやうもなければ、ただおほどかにておはす。今日けふは、院の御経営けいめいにて、善勝寺ぜんしようじの大納言隆顕たかあき桧破子ひわりごやうの物、色々にいと清らに調てうじてまゐらせたり。三廻りばかりは、各々べちに参る。その後「余りあいなう侍れば忝けれど、昔様に思しなずらへ、許させ給ひてんや」と、御気色取り給へば、女院の御土器かはらけを斎宮参る。




その後方々に御台([飯・菜などを盛った器をのせる 長方形の台])が出されて、昼方にまた対面されました。斎宮(第八十八代後嵯峨天皇の第二皇女、愷子やすこ内親王)はとても恥ずかしく顔を合わすのも憚られて、「どうして会うことができましょう」と思いましたが、女院(大宮院。第八十八代後嵯峨天皇中宮皇太后、西園寺姞子きつし)が親しげに申せば、断ることもかなわず、ただ何事もなかったようにしておられました。この日は院(第八十九代後深草院)の経営([主催])でした、善勝寺大納言隆顕(四条隆顕)が、桧破子([ヒノキなどの白木を薄くはいだ板で作られた運搬用食器])を、色々にたいそう美しく盛って参らせました。盃三廻りばかりは、各々呑まれましたが、その後「一人呑むのはつまらぬ、昔のように、盃を廻すのはどうか」と、申したので、女院(大宮院)は盃を斎宮に回されました。


続く


by santalab | 2015-10-16 08:15 | 増鏡

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