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「太平記」将軍薨逝の事(その2)

同じき十二日むまの刻に、荼毘だびの規則を調へて、仏事の次第厳重げんぢゆうなり。鎖龕さがんは東福寺の長老信義堂しんぎだう起龕きがんは建仁寺龍湫周沢りゆうしうしうたく奠湯てんたうは万寿寺の桂岩けいがん奠茶てんちやは真如寺の清ぎん西堂、念誦ねんじゆは天竜寺の春屋しゆんをく下火あこは南禅寺の定山和尚にてぞをはしける。文々もんもん悲涙ひるゐ玉詞ぎよくしを磨き、句々に真理の法義を被宣しかば、尊儀すみやかに出三界苦輪、ぢきに到四徳楽邦給ひけんと哀れなりし事どもなり。




同じ貞治ぢやうぢ六年十二月十二日の午の刻([午前十二時])に、荼毘([火葬])の仕度を調えて、仏事が型通り厳かに執り行われました。鎖龕([葬式の際、遺体を納めた棺のふたをすること])は東福寺(現京都市東山区にある寺)の長老信義堂、起龕([葬儀のとき、棺を墓所へ送り出すこと])は建仁寺(現京都市東山区にある寺)の龍湫周沢(臨済宗の僧)、奠湯([仏前または大衆に蜜湯を点じて供すること])は万寿寺(現京都市東山区の東福寺内にある寺)の桂岩、奠茶([茶を霊前などに供えること])は真如寺(現京都市北区にある寺)の清ぎん西堂、念誦([経文や仏の名号または真言などを口に唱えること])は天竜寺(現京都市右京区にある寺)の春屋(春屋妙葩めうは。臨済宗の僧)、下火([火葬のときに導師が遺体を焼く燃料に火をつけること])は南禅寺(現京都市左京区にある寺)の定山和尚が勤めました。文々に悲涙の玉詞([美しい言葉])をちりばめ、句々に真理の法義([仏法の教義])を申せば、尊儀([仏・菩薩の像])はすみやかに三界([一切衆生が、生まれ、また死んで往来する世界])の苦輪([六道生死の苦しみが繰り返されて止まないこと])から救い出し、四徳([涅槃の四つの徳。常・楽・我・浄])の涅槃([一切の悩みや束縛から脱した円満・安楽の境地。仏教で理想とする仏の悟りを得た境地])の楽邦(美しい音曲が流れる地=天界)に到らせるであろうとありがたく思われました。


続く


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by santalab | 2015-10-29 13:09 | 太平記 | Comments(0)

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