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「太平記」民部卿三位局御夢想の事(その3)

御夢覚めて歌の心を案じ給ふに、君つひ還幸くわんかう成りて雲の上に住ませ可給瑞夢ずゐむなりと、頼もしく思うのでした。まことにかの聖廟せいべうまうし奉るは、大慈大悲の本地ほんぢ、天満天神の垂迹すゐじやくにて渡らせ給へば、一度ひとたび歩みを運ぶ人、二世の悉地しつち成就じやうじゆし、わづかに御名を唱ふるともがら、万事の所願しよぐわんを満足す。いはんや千行万行せんかうばんかう紅涙こうるゐしただり尽くして、七日七夜の丹誠たんぜいを致させ給へば、懇誠こんぜい暗に通じて感応かんおうたちまちに告げあり。世すでに澆季げうきに雖及、信心まことある時は霊感れいかんあらたなりと、いよいよ頼もしくぞ思し召しける。




夢から覚めて歌の心を案じると、君(第九十六代後醍醐天皇)が還幸されて雲の上([宮中])に住まわれる瑞夢([縁起のよい夢])と、頼もしく思われたのでした。この聖廟([菅原道真をまつった廟]。現京都市上京区にある北野天満宮)と申すのは、大慈大悲(観世音菩薩)の本地([本来の仏・菩薩。本地仏])、天満天神の垂迹([仏・菩薩が人々を救うため、仮に日本の神の姿をとって現れること])でしたので、一度でも歩みを運ぶ人は、二世の悉地([修行によって完成された境地])を成就し、わずかも御名を唱える者たちは、万事の所願を叶える所でした。言うまでもなく千行万行の紅涙I([血の涙])を流し尽くして、七日七夜の丹誠([誠意])を致せばこそ、懇誠([まごころがこもっていること])は通じて感応([信心が神仏に通じること])の告げがありました。世はすでに澆季([道徳が衰え、乱れた世])に及ぶといえども、信心を尽くせば霊感([神仏が示す霊妙な感応])あらたかなりと、ますます頼もしく思われるのでした。


続く


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by santalab | 2015-11-06 08:38 | 太平記 | Comments(0)

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