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「太平記」頼員の事(その3)

斉藤おほきに驚き、やがて左近蔵人を呼び寄せ、「かかる不思議をうけたまはる、まことにて候ふやらん。今の世に加様かやうの事、思ひくはだて給はんは、ひとへに石を抱いて淵に入る者にて候ふべし。もし他人の口より漏れなば、我らに至るまで皆誅せらるべきにて候へば、利行急ぎ御辺の告げ知らせたる由を、六波羅殿にまうして、共にそのとがを遁れんと思ふは、いかんか計らひ給ふぞ」と、問ひければ、これ程の一大事を、女性によしやうに知らする程の心にて、なじかは仰天ぎやうてんせざるべき、「この事は同名どうみやう頼貞よりさだ多治見たぢみ四郎次郎が勧めに依つて、同意仕りて候ふ。ただともかくも、身の咎を助かるやうに御計らひ候へ」とぞ申しける。




斉藤(斎藤利行としゆき)はたいそう驚いて、すぐに左近蔵人(土岐頼員よりかず)を呼び寄せ、「このような不思議な話を聞いたが、まことであろうか。今の世にそのような事を、企てることは、石を抱いて淵に入るようなものよ。もし他人の口から漏れれば、我らにいたるまで皆誅せられるに違いない、この利行は急ぎお主が告げ知らせたと、六波羅殿に申して、ともにその罪を逃れようと思うが、どうか」と、訊ねると、男(土岐頼員)はこれほどの一大事を、女性に知らせるほどの知恵浅い者でしたので、まったく分別もなく、「この事は同名(土岐頼貞)・多治見四郎次郎(多治見国長くになが)の勧めるままに、同意したまでのことです。ただともかくも、身の咎を助かるように計らってください」と申しました。


続く


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by santalab | 2015-11-17 07:13 | 太平記 | Comments(0)

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