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「太平記」千寿王殿被落大蔵谷事(その2)

ここに高氏の長男竹若殿は、伊豆いづ御山おやまにおはしましけるが、伯父の宰相さいしやう法印良遍りやうべんちご・同宿十三人じふさんにん山伏の姿に成つて、ひそかに上洛しやうらくし給ひけるが、浮嶋うきしまが原にて、かの両使ひにぞ行き合ひ給ひける。諏訪・長崎生け捕り奉らんと思ふところに、宰相法印無是非馬上にて腹切つて、道のかたはらにぞ臥し給ひける。長崎、「さればこそ内に野心のある人は、外に遁るる無辞」とて、若竹殿を潛かに刺し殺し奉り、同宿十三人じふさんにんをば首を刎ねて、浮嶋が原に懸けてぞとほりける。




高氏(足利高氏)の長男竹若殿は、伊豆山(現静岡県熱海市伊豆山にある伊豆山神社)にいましたが、伯父の宰相法印良遍(覚遍。母の兄らしい)、児・同宿([同じ寺に住み、同じ師について修行する僧])とともに山伏姿で、ひそか上洛するところに、浮嶋が原(現静岡県富士市)で、かの両使い(長崎為基ためもと・諏訪宗経むねつね)とばったり出会いました。諏訪(宗経)・長崎(為基)は生け捕りにしようと思っていましたが、宰相法印はいきなり馬上で腹を切って、道の傍らに倒れ臥しました。長崎(為基)は、「やはり野心を持っておったか、遁れることはできないものを」と申して、若竹殿を刺し殺すと、同宿十三人の首を刎ねて、浮嶋が原に掛けて鎌倉に戻りました。


続く


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by santalab | 2015-11-18 06:21 | 太平記 | Comments(0)

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