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「太平記」頼員の事(その6)

時綱ときつなはわざと敵を広庭ひろにはへおびき出だし、透間もあらば生け捕らんと心ざして、打ち払ひては退き、打ち流しては飛び退き、人交ぜもせず戦うて、後ろをきつと見たれば、後陣ごぢん大勢おほぜい二千余騎、二のきどよりこみ入つて、同音に鬨を作る。土岐十郎久しく戦うては、中々生け捕られんとや思ひけん、本の寝所へ走りかへつて、腹十文字に掻き切つて、北枕にこそ臥したりけれ。中の間に寝たりける若党わかたうどもも、思ひ思ひに討ち死にして、遁るる者一人もなかりけり。首を取つてきつさきに貫いて、山本九郎はこれより六波羅へ馳せまゐる。




時綱(山本時綱)はわざと敵を広庭におびき出し、隙あらば生け捕りしようと、打ち払っては退き、打ち流しては飛び退き、助けも借りず戦っていましたが、後ろを見れば、後陣の大勢二千余騎が、二の木戸より乱れ入って、同音に鬨を作りました。土岐十郎(土岐頼貞よりさだ)はこのまま戦えば、きっと生け捕られると思ったか、本の寝所へ走り帰って、腹を十文字に掻き切って、北枕に臥しました。中の間に寝ていた若党どもも、思い思いに討ち死にして、助かる者は一人もいませんでした。頼貞の首を取り切っ先に貫いて、山本九郎(時綱)はこれより六波羅へ急ぎ参りました。


続く


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by santalab | 2015-11-20 06:39 | 太平記 | Comments(0)

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