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「太平記」頼員の事(その9)

寄せ手これを見て、いよいよ近付く者もなかりけるあひだ、内より門の扉を推し開いて、「討つ手をうけたまはるほどの人達の、きたなうも見へられ候ふ者かな。早やこれへ御入り候へ。我らが頭ども引出物にまゐらせん」と、はぢしめてこそ立ちたりけれ。寄せ手ども敵にあくまで欺かれて、先陣せんぢん五百余人馬を乗り放して、歩立かちだちに成り、をめいて庭へこみ入る。立て篭もる所のつはものども、とても遁れじと思ひ切つたる事なれば、いづくへか一足も引くべき。二十余人にじふよにんの者ども、大勢おほぜいの中へ乱れ入つて、おもても振らず切つてまはる。先駆けの寄せ手五百余人、散々に切り立てられて、門より外へさつと引く。されども寄せ手は大勢おほぜいなれば、先陣引けば二陣をめいて駆け入る。駆け入れば追ひ出だし、追ひ出だせば駆け入り、辰の刻の始めより午の刻のをはりまで、火出づる程こそ戦ひけれ。




寄せ手はこれを見て、ますます近付く者もいませんでしたので、内より門の扉を押し開いて、「討つ手を任させるほどの人たちが、尻込みしてどうする。早くこちらへ入られよ。我らの首を引き出物に参らする」と、辱めました。寄せ手どもは敵に促されて、先陣五百余人が馬を乗り捨てて、歩立ちになり、喚きながら庭へなだれ込みました。立て籠もる兵どもは、とても逃れられぬと思い切っていましたので、一歩も引きませんでした。二十余人の者どもが、大勢の中へ乱れ入って、面も振らず切り廻りました。先駆けの寄せ手五百余人は、散々に切り立てられて、門より外へさっと引きました。けれども寄せ手は大勢でしたので、先陣が引くと二陣が喚きながら駆け入りました。駆け入れば追い出し、追い出だせば駆け入り、辰の刻([午前九時頃])のはじめより午の刻([御前十三時頃])の終わりまで、火が出るほどに戦いました。


続く


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by santalab | 2015-11-20 19:12 | 太平記 | Comments(0)

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