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「太平記」新田義貞謀反の事付天狗催越後勢事(その5)

義貞よしさだおほきに悦びて、馬を控へてのたまひけるは、「この事兼ねてよりそのそのくはだてはありながら、昨日今日きのふけふとは存ぜざりつるに、俄かに思ひ立つ事の候ひつる間、告げまうすまでなかりしに、何として存ぜられける」と問ひ給ひければ、大井田おゐだ遠江とほたふみかみ鞍壺に畏つて被申けるは、「依勅定大儀を思し召し立たるる由うけたまはり候はずば、何にとして加様かやうに可馳参候。去んぬる五日の御使ひとて天狗山伏一人、越後の国中を一日の間に、触れまはりてとほさふらひし間、夜を日に継いで馳せまゐつて候ふ。境を隔てたる者は、皆明日の程にぞ参着候はんずらん。他国へ御出で候はば、しばらくかの勢を御待ち候へかし」と被申て、馬より下りて各々対面色代して、人馬の息を継がせ給ひけるところに、後陣ごぢんの越後勢並びに甲斐・信濃の源氏ども、家々の旗を指し連れて、その勢五千余騎おびたたしく見へて馳せ来たる。




義貞(新田義貞)はたいそうよろこんで、馬を控えて申すには、「このことは兼ねてより企ててはいたが、昨日今日のこととは思っていなかった、急に思い立つことがあり、告げ申すことができなかった、どうして知っておられる」と訊ねると、大井田遠江守が鞍壺に畏って申すには、「勅定により大儀を思し召し立たれたと承り、何に代えてもとこうして馳せ参った次第でございます。去る五日にお使いと申して天狗山伏が一人、越後国中を一日の間に、触れ回り通りましたので、夜を日に継いで馳せ参ったのでございます。国境を隔てた者は、皆明日のほどには着くはずでございます。他国へお出でになられるのであれば、しばらくかの勢をお待ちください」と申して、馬より下りて各々対面色代([挨拶])して、人馬の息を継がるところに、後陣の越後勢ならびに甲斐・信濃の源氏どもが、家々の旗を指して、その勢五千余騎を超えて馳せ来ました。


続く


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by santalab | 2015-11-21 08:54 | 太平記 | Comments(0)

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