Santa Lab's Blog


「太平記」主上御没落笠置事(その7)

遠からぬ雲の上の御住居すまゐ、いつしか思し召し出だす御事多き時節をりふし、時雨の音の一通ひととほり、軒端のきばの月に過ぎけるを聞こし召して、

住み馴れぬ 板屋の軒の 村時雨 音を聞くにも 袖は濡れけり

四五日ありて、中宮の御方より御琵琶びはを被進けるに、御文あり。御覧ずれば、
思ひやれ 塵のみつもる 四つのに 払ひもあへず かかる泪を

引きかへして、御返事おんかへりごとありけるに、
涙ゆへ 半ばの月は かくるとも ともに見し夜の 影は忘れじ




遠からぬ雲の上([宮中])の住居を、いつしか思い出されることが多くなられた時節に、時雨の音がさっと、軒端の月を過ぎるのを聞かれて、

住み馴れぬ板屋の軒の叢時雨の音を聞くと、時雨に降られたわけでもないのになぜか袖は濡れてしまうのだ。

四五日あって、中宮(第九十六代後醍醐天皇中宮、西園寺禧子きし)の方より琵琶が届けられまて、文がありました。御覧になれば、
わたしの悲しみを思い遣ってくださいませ。塵のみ積もる四つ絃([琵琶])に、払う隙もなく涙がかかっているのがわかりますか。

引き返して、返事がありました、
涙で半ばの月([琵琶])の涙の跡は見えぬが、ともに見た夜の月影は決して忘れぬ。


続く


[PR]
by santalab | 2015-11-22 09:44 | 太平記 | Comments(0)

<< 「太平記」主上御没落笠置事(その8)      「太平記」主上御没落笠置事(その6) >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
最新のコメント
返歌 草枕…に因んで短歌..
by 井上勇 at 23:54
ただおし出づるままに の..
by SiNa at 21:40
「義経記」の御紹介記事を..
by Magohati38 at 02:04
すばらしいサイト おかげ..
by johsei1129 at 23:54
青き花咲く大地 気高き..
by 北朝鮮の水爆に十神山も激怒 at 02:50
全然現代語訳できてない
by あ at 02:04
 その島根県(旧出雲国東..
by 民俗学者 at 23:34
うーん、松島からまた仙台..
by 五十嵐洋(秋田県大館市) at 00:51
「下野の室の八嶋にて待て..
by 八島 守 at 12:03
ひょんな事から、このブロ..
by yoshy at 18:50
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧