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「太平記」主上御没落笠置事(その10)

同じき十三日に、新帝登極とうきよくの由にて、長講堂より内裏へ入らせ給ふ。供奉ぐぶの諸卿、花をつて行装かうさうを引きつくろひ、随兵ずゐびやうの武士、甲冑かつちうを帯して非常をいまむ。いつしか前帝奉公の方様には、とがあるも咎なきも、如何なる憂き目をか見んずらんと、事に触れて身を危ぶみ心を砕けば、当今拝趨たうぎんはいすうの人々は、有忠も無忠も、今に栄花えいぐわを開きぬと、目を悦ばしめ耳を肥やす。子むすんで陰を成し、花落ちて枝を辞す。窮達きゆうたつ時を替へ栄辱えいじよく道を分かつ。今に始めぬ憂き世なれども、殊更夢とうつつとを分け兼ねたりしはこの時なり。




同じ元弘元年(1331)十月十三日に、新帝(北朝初代光厳くわうごん天皇)が登極([即位])のため、長講堂(土御門東洞院殿。現京都市上京区)より内裏に入られました。供奉の諸卿は、花を折って行装([外出の際の服装])を飾り、随兵の武士は、甲冑を帯して非常を戒めました。いつしか前帝(第九十六代後醍醐天皇)に奉公していた人たちは、罪あるもなきも、どんな憂き目を見るかと、事に触れて身を危ぶみ不安に思い、当今拝趨([出向くことをへりくだっていう語])の人々は、忠ある者もなき者も、今に栄華を迎えると、よろこびました。実を結んでは陰をなし、花は落ち葉は散る。窮達([おちぶれることと栄えること])は時の移り変わりとともに栄辱([名誉と恥辱])を分けます。今にはじめぬ憂き世とはいえ、ことさらに夢幻とも思えませんでした。


続く


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by santalab | 2015-11-22 09:55 | 太平記 | Comments(0)

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