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「太平記」先帝船上臨幸事(その1)

畿内の軍未だしづかならざるに、また四国・西国日を追つて乱れければ、人の心皆薄氷をんで国のあやふき事深淵に臨むが如し。そもそも今如斯天下の乱るりる事はひとへに先帝の宸襟しんきんより事これり。もし逆徒差し違ふて奪ひ取り奉らんとする事もこそあれ、相構あひかまへてよくよく警固仕るべしと、隠岐の判官が方へ被下知ければ、判官近国の地頭・御家人をもよほして日番・夜廻よまはり隙もなく、宮門を閉ぢて警固し奉る。




畿内の軍いまだ静まらぬうちに、また四国・西国では日を追うごとに乱が起こり、人は皆薄氷を踏むような気がして国の危機が迫り来るのを覚えました。そもそも今こうして天下が乱れることはひとえに先帝(第九十六代後醍醐天皇)の宸襟([心])より起こったものでした。もしや逆徒が刺し違えても命を奪い取ろうとすることもあろうかと、よくよく警固せよと、隠岐判官(佐々木清高きよたか)に命じたので、判官は近国の地頭・御家人を集めて日番・夜廻りを隙なくさせて、宮門を閉じて警固しました。


続く


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by santalab | 2015-11-22 10:17 | 太平記 | Comments(0)

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