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「太平記」奥州国司顕家卿並新田徳寿丸上洛の事(その5)

長井ながゐの斉藤別当べつたう・舎弟豊後の次郎、兄弟二人ににんこれを見て、「人の渡したる所を渡つては、何の高名かうみやうかあるべき」と、ともに腹を立てて、これより三町さんちやうばかりかみなる瀬をただ二騎渡しけるが、岩浪高くして逆巻さかまく波に巻き入れられて、馬人ともに見へず、水の底にしづんで失せにけり。その身はいたづらに溺れて、かばねは急流の底に漂ふといへども、その名は永く止まりて武を九泉の先にかかやかす。さてこそ鬚髪しゆはつを染めて討ち死にせし実盛さねもりが末とは思へたれと、万人感ぜし言葉の下に先祖の名をぞ上げたりける。




長井斉藤別当・弟の豊後次郎、兄弟二人はこれを見て、「人が渡った所を渡っては、何の高名があろう」と、ともに腹を立てて、これより三町ばかりの瀬をただ二騎で渡りましたが、岩浪高く逆巻く波に巻き入れられて、馬人ともに見えず、水の底に沈んでしまいました。その身は溺れて、屍は急流の底に漂うことになりましたが、その名は永く残りその武は九泉([あの世])の名誉となりました。さすが鬚髪を染めて討ち死にした実盛(斎藤実盛。『平家物語』)の子孫と、万人は感嘆するとともに先祖の名をも上げました。


続く


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by santalab | 2015-11-25 21:55 | 太平記 | Comments(0)

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