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「太平記」立后事付三位殿御局事(その2)

その頃安野あの中将ちゆうじやう公廉きんかどの娘に、三位殿さんみどのの局とまうしける女房にようばう、中宮の御方にさぶらはれけるを、君一度ひとたび御覧ぜられて、他に異なる御覚あり。三千の寵愛一身にありしかば、六宮りくきゆう粉黛ふんたいは、顔色がんしよくなきが如くなり。すべて三夫人・九嬪きうひん・二十七の世婦せいふ・八十一の女御・および後宮の美人・楽府がふ妓女ぎぢよと云へども、天子顧眄こめんの御心を付けられず。ただ殊艶尤態しゆえんいうたいの独りよくを致すのみに非ず、けだ善巧便佞ぜんかうべんねい叡旨に先だつて、奇を争ひしかば、花のもとの春の遊び、月のまへの秋の宴、すればてぐるまを共にし、みゆきすれば席を欲しいままにし給ふ。




その頃安野中将公廉(安野公廉)の娘に、三位殿の局と申す女房(阿野廉子やすこ)が、中宮(西園寺禧子きし)の御方に仕えていました、君(第九十六代後醍醐天皇)は一度ご覧になられて、格別の覚えがございました。三千の寵愛を一身に受けて、六宮([中国で、皇后と五人の夫人が住む六つの宮殿])の粉黛([美人])も、顔色を失うほどでした。すべて三夫人([四夫人]=[貴妃、淑妃、徳妃、賢妃])・九嬪([昭儀、昭容、昭媛、修儀、修容、修媛、充儀、充容、充媛])・二十七世・八十一女御(八十一御妻)・および後宮の美人・楽府の妓女([舞女])に至るまで、天子(第九十六代後醍醐天皇)は顧眄([振り返って見ること])の心を持たれませんでした。ただ艶やかな尤態([美しい姿])ばかりでなく、言葉巧みに叡旨([天子の言葉])を誘い([便佞]=[口先は巧みだが、心に誠実さのないこと])、愛楽に明け暮れましたので、花の下の春の遊び、月の前の秋の宴、駕([車・馬などに乗る])すれば輦をともにし、御幸すれば席は欲しいままでした。


続く


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by santalab | 2016-01-05 13:11 | 太平記 | Comments(0)

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