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「太平記」越後守仲時以下自害の事(その9)

これらを宗との者として、都合つがふ四百三十二人しひやくさんじふににん、同時に腹をぞ切つたりける。血はその身を浸してあたかも黄河くわうがの流れの如くなり。死骸は庭に充満して、屠所どしよの肉に不異。かの己亥きがいの年、五千の貂錦てうきん胡塵こぢんに亡び、潼関とうくわんの戦ひに、百万の士卒河水に溺れなんも、これにはよも過ぎじとあはれなりし事ども、目も当てられず、言ふにことばもなかりけり。主上しゆしやう上皇しやうくわうは、この死人どもの有様を御覧ずるに、肝心も御身に不傍、ただあきれてぞましましける。




これらの者をはじめとして、都合四百三十二人が、同時に腹を切りました。血はその身を浸してまるで黄河の流れのようでした。死骸は庭に充満して、屠所の肉に異なりませんでした。かの己亥の時(中国唐の時代)、五千の貂錦([錦衣]=[美しい着物])たちは胡塵([攻め寄せる遊牧民族の兵馬によってまきおこる砂塵])とともに亡び(黄巣の乱(879))、潼関の戦い([曹操と、涼州の馬超・韓遂ら関中十部の連合軍が潼関周辺において行った戦い(211)])で、百万の士卒が河水(黄河)に溺れたのも、これには過ぎないと思えてその悲しさは、目も当てられぬほど、申す言葉もありませんでした。主上(北朝初代、光厳くわうごん天皇。第九十三代後伏見天皇の第二皇子)・上皇(後伏見院)は、この死人どもの有様を聞かれて、肝心も御身に添わず、ただ驚くばかりでした。


続く


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by santalab | 2015-12-08 07:31 | 太平記 | Comments(0)

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