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「太平記」大森彦七事(その17)

まことなるかな、天竺の班足王はんぞくわうは、仁王経にんわうきやう功徳くどくに依つて千王を害する事をめ、我が朝の楠木正成は、大般若だいはんにや講読かうどく結縁けちえんに依つて三毒を免るる事を得たりき。まことに鎮護国家の経王きやうわう利益りやく人民の要法なり。その後この刀をば天下てんがの霊剣なればとて、委細の註進を副へて上覧に備へしかば、左兵衛さひやうゑかみ直義ただよし朝臣これを見給ひて、「まことならば、末世の奇特何事か可如之」とて、上を作りなほして、小竹作りと同じく賞翫しやうぐわんせられけるとかや。砂子いさごうづもれて年久しく断剣の如くなりしこの刀、盛長もりながが註進に依つて凌天りようてんの光を耀かかやかす。不思議なりし事どもなり。




伝え聞くところ、天竺の班足王(インドの伝説上の王)は、仁王経の功徳によって千人の王を殺害するのを止めて、我が朝の楠木正成は、大般若講読の結縁により三毒([仏教において克服すべきものとされる最も根本的な三つの煩悩。貪・瞋・痴])を免れることができました。まことに鎮護国家の経王、人民利益([人々を救済しようとする仏神の慈悲や、人々の善行・祈念が原因となって生ずる、宗教的あるいは世俗的なさまざまの恩恵や幸福])の要法でした。その後この刀を天下の霊剣であると、詳しく註進([事件を記して急ぎ上申すること])を添えて上覧に入れると、左兵衛督直義朝臣(足利直義。足利尊氏の弟)はこれを見て、「まことならば、末世の奇特これに勝るものなし」と申して、上を作り直して、小竹作りと同じように大事にされたとか。砂子に埋もれて年久しく断剣ともいえるこの刀は、盛長(大森盛長)の註進によって凌天の光の如く光り輝きました。不思議なことでした。


続く


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by santalab | 2015-12-19 09:06 | 太平記 | Comments(0)

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