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「太平記」仁木京兆参南方事付大神宮御託宣事(その4)

推量するに、ただ勅命を借つて私の本意を達せば、君をば御位に即けまゐらするとも、天下をば我がままにすべきものをと、心中に差し挟む者なり。今また仁木右京うきやうの大夫義長よしなが、大敵に囲まれたるが堪へ難さに、御方に参ずる由をまうすを、諸卿許容し給ふこそ心得ね。彼が平生へいぜいの振る舞ひ悪として不造言ふ事なし。いささかも心に逆らふ時は、無咎人を殺して誤れりとも思はず、気に合ふ時は、忠なく賞を与へてたちまちにこれを取り返す。先づ多年の芳恩を忘れて、義詮よしあきら朝臣あつそんを背くほどの者なれば、君の御為に深く忠義を存ずるべきや。七箇国の管領を、なほ飽き足らず思ひしほどの心なれば、この方の五箇国・三箇国の恩賞を、不足なしと思すべきや。もしまたかれが如所存恩賞を被行なはれ、日本につぽん六十六ろくじふろく箇国に一所も残る所あるべからず。多年旧功きうこう官軍くわんぐんども、いづれの所にか身を置くべき。つらつらこれを思ふに、忠臣にあらず智臣にあらず、仏神に被捨まゐらせ、人望に背いて自滅せんとする悪人を、御方にならせたらば、あに聖運の助けならんや。ただ虎を養ひてみづかうれひを招く風情なるべきものを」と申しければ、




推量するに、ただ勅命を借りてわたくしの本意を達せば、君が帝位に即かれようとも、天下を思い通りに致そうと、心中に差し挟む者であろう。今また仁木右京大夫義長(仁木義長)が、大敵に囲まれて堪えきれずに、味方に参ずる旨を申すを、諸卿が許容されることこそ意外なことよ。彼の平生の振る舞いを悪として不造(いたらざるなし)と申す人はない([無悪不造]=[悪事をほしいままにしてはばからぬこと])。わずかも気に入らぬ時は、咎なき人を殺して誤りとも思わず、気に合う時は、忠なく賞を与えてたちまちにこれを取り返す。ともかく多年の芳恩を忘れて、義詮朝臣(足利義詮。足利尊氏の嫡男で室町幕府第二代将軍)を背くほどの者なれば、君(南朝第二代、後村上天皇)のために深く忠義を致すとも思えぬ。七箇国の管領を、なお飽き足らず思っているのだ、この方の五箇国・三箇国の恩賞を、不足でないと思うはずもない。もしまた義長の望むままに恩賞がなされたならば、日本六十六箇国に一所も残る所はないであろう。多年旧功の官軍どもは、いずれの所にか身を置くというのだ。よくよく勘案すれば、忠臣でもなく智臣でもなっく、仏神に見放され、人望に背いて自滅しようとする悪人を、味方にしたならば、どうして聖運の助けがあろう。ただ虎を養い自ら憂いを招くようなものだ」と申しました、


続く


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by santalab | 2015-12-24 09:09 | 太平記 | Comments(0)

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