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「太平記」天王寺造営事付京都御祈祷事(その1)

南方にはこの大地震に、諸国七道の大伽藍どもの破れたるていを聞くに、天王寺てんわうじ金堂こんだうほど崩れたる堂舎はなく、紀州の山々ほど裂けたる地もなければ、これ外の表事へうじにはあらじと御慎しみあつて、様々の御祈りどもを始めらる。すなはち般若寺はんにやじ円海ゑんかい上人勅をうけたまはりて、天王寺の金堂を造られけるに、希代きたい奇特きどくども多かりけり。先づ大廈たいか高堂の構へなれば、安芸・周防・紀伊の国の杣山そまやまより、大木を取らんずる事、一二年の間には道行き難く思へけるに、二人ににんして抱きまはすほどなるの木の柱、六七丈なる株木かぶき三百本、いづくより来たるとも知らず、難波の浦に流れ寄りて、潮の干潟にぞ留まりける。しばらくは主ある材木にてぞあるらんと、たづね来る人を待たれけれども求め来る人もなかりければ、さては天竜八部てんりゆうはちぶの人力を助け給ふにてぞあるらんとて、こううつばりほういらか、品々にこれをぞ用ひける。




南方ではこの大地震で、諸国七道([東海道・東山道・北陸道・山陰道・山陽道・南海道・西海道])の大伽藍([大寺院])の破損状況を聞くと、天王寺(現大阪市四天王寺区にある寺)の金堂ほどに倒壊した堂舎はなく、紀州(紀伊国。今の和歌山県)の山々ほどに崩れた所もなかったので、天王寺ほどの被害はないようにと斎戒して、様々の祈祷が始まりました。すぐに般若寺(現奈良県奈良市般若寺町にある寺)の円海上人が勅を下されて、天王寺の金堂を造ることになりましたが、前例のない奇特([非常に珍しく、不思議なさま])な事象が数多くありました。まず大廈([大きな建物])高堂の造営でしたので、安芸(現広島県西半分)・周防(現山口県東部)・紀伊国(現和歌山県)の杣山([木材を切り出す山])より、大木を取らなくてはなりませんでしたが、一二年の間には運び出せるとも思えませんでした、けれど二人で抱き廻すほどの檜の柱、六七丈(約18~21m)の株木([山林などから切り出したままの材木])三百本が、どこから来たのとも知れず、難波浦に流れ着いて、潮干潟に留まりました。しばらくは主のある材木にちがいないと、探し来る者を待っていましたが求め来る者もいなかったので、さては天竜八部衆([天・竜をはじめとする仏法守護の八神])が人力を助けたのであろうと、虹のような梁([屋根の重みを支えるための横木])・鳳([大きな鳥])のような甍([屋根])、品々にこの木を使いました。


続く


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by santalab | 2015-12-25 08:45 | 太平記 | Comments(0)

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