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「太平記」天王寺造営事付京都御祈祷事(その3)

都には東寺の金堂こんだう一尺二寸南へ退きて、高祖かうそ弘法こうぼふ大師南天へ飛び去らせ給ひぬと、寺僧の夢に見えければ、洛中の御慎しみたるべしとて、青蓮院しやうれんゐん尊道そんだう法親王ほふしんわうに仰せられ、伴僧ばんそう二十口にじつく八月十三日より内裏に伺候して、大熾盛光だいしじやうくわうの法を行はる。聖護院しやうごゐん覚誉かくよ親王しんわうは、二間に御参りあつて、九月八日より一七日、尊星王そんしやうわうの法をぞ修せられける。これのみならず、近年絶えてなかりつる最勝講さいしようかうを行はる。初日は問者もんじや叡山えいさん尋源じんげん・東大寺の深慧しんゑ、講師には、興福寺こうぶくじ盛深じやうじん・同じき寺の範忠はんちゆう、第二日の問者は、東大寺の経弁けいべん・同じく良懐りやうくわい、講師は興福寺の実遍じつべん・山門の慈俊じしゆん、第三日の問者は、興福寺の円守・山門の円俊、講師は、三井寺みゐでら経深けいじん・興福寺の覚成かくせい、第四日の問者は、興福寺の孝憲けうけん・同じき寺の覚家かくげ、講師は、叡山の良憲りやうけん・三井寺の房深ばうじん結日けつにちの問者は、東大寺の義実ぎじつ・興福寺の教快けうくわい、講師は、山門の良寿りやうじゆ・興福寺の実縁じつえん証義しようぎは、大乗院のさき大僧正だいそうじやう孝学かうがく・尊勝院の慈能じのう僧正そうじやうにてぞおはしける。講問朝夕てうせきに坐を替へて、学海に玉を拾へる論談を決択けつたくしてことばの林に花咲く。富楼那ふるな弁舌べんぜつ、文殊の智恵も、かくやと思ゆるばかりなり。




都では東寺(現京都市南区にある教王護国寺)の金堂が一尺二寸南へ移動して、高祖([仏教で、一宗派の開祖])弘法大師(空海)が南天へ飛び去ったと、寺僧の夢に見えたので、洛中の慎しみと、青蓮院の尊道法親王(第九十三代後伏見天皇の第十一皇子)に仰せ付けられて、伴僧二十口が八月十三日より内裏に伺候して、大熾盛光の法([熾盛光如来を本尊として行う修法。主として天皇・ 上皇のため,除災・招福を祈って行われる])が執り行われました。聖護院覚誉親王(第九十五代花園天皇の第一皇子)は、二間に参られて、九月八日より七日間、尊星王の法([尊星王=妙見菩薩。を本尊とする修法。国家安泰を祈る大法])を修められました。これのみならず、近年絶えてなかった最勝講([宮中の清涼殿で行われた法会])を執り行いました。初日は問者([論議などの席や竪義りゆうぎの際に、提出されている問題について竪者に問難する役の僧])は叡山の尋源・東大寺(現奈良県奈良市にある寺院)の深慧、講師には、興福寺(現奈良県奈良市にある寺院)の盛深・同じ寺の範忠、第二日の問者は、東大寺の経弁・同じく良懐、講師は興福寺の実遍・山門(延暦寺)の慈俊、第三日の問者は、興福寺の円守・山門の円俊、講師は、三井寺(現滋賀県大津市にある寺院)の経深・興福寺の覚成、第四日の問者は、興福寺の孝憲・同じ寺の覚家、講師は、叡山の良憲・三井寺の房深、結日の問者は、東大寺の義実・興福寺の教快、講師は、山門の良寿・興福寺の実縁、証義([最勝会・法華会・維摩会ゆいまえなどの法会の論義問答である竪義で、解答の可否を批判し判定する役])は、大乗院(奈良県奈良市の興福寺にあった塔頭の一)の前大僧正孝学・尊勝院(現京都市東山区にある寺院)の慈能僧正でした。講問([問答])は朝夕坐を替えて、学海に玉を拾う論談を決択([選び定めること])して詞の林に花が咲くようでした。富楼那([釈迦十大弟子の一人。 説法第一])の弁舌、文殊の智恵も、このようなものであろうと思わえました。


続く


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by santalab | 2015-12-25 08:59 | 太平記 | Comments(0)

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