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「太平記」清氏反逆事付相摸守子息元服事(その3)

かやうの事ども互ひにいきどほり深くなりにければ、両人の確執止む事を得ず。上にはさりげなきていなれども、下には悪心を差し挟めり。されば始終はいかがと思ひ遣へたり。この相摸のかみは気分飽くまでおごつて、行迹ぎやうせき世の常ならざりけれども、ひとへに仏神をうやまふ心深かりければ、神に帰服して、子孫の冥加を祈らんとや思はれけん、また我が子の烏帽子親に取るべき人なしとや思ひけん、九つと七つとになりける二人ににんの子を八幡やはたにて元服せさせ、大菩薩の烏帽子子になして、兄をば八幡はちまん六郎ろくらう、弟をば八幡八郎はちらうとぞ名付けける。この事やがて天下の口遊くちずさみとなりければ、将軍これを聞き給ひて、「これはただ当家の累祖るゐそ伊予の守頼義よりよし三人の子を八幡太郎・賀茂次郎・新羅三郎と名付けしに異ならず。心中にいかさま天下を奪はんと思ふくはたてある者なり」と所存にたがひてぞ思はれける。




このような事があって互いの憤りは深くなり、両人の確執は止まることがありませんでした。表向きはさりげない振りをしていましたが、内には悪心を差し挟んでいました。末はどうなることかと思われました。相摸守(細川清氏きようぢ)はあくまで威を嵩に懸け、行迹([振る舞い])は並外れていましたが、一途に仏神を敬う心深く、神に帰服して、子孫の冥加([知らぬうちに受ける神仏の援助・保護。冥利])を祈ろうと思ったのか、また我が子の烏帽子親にするべき人はいないと思ったか、九つと七つになる二人の子を八幡(現京都府八幡市にある石清水八幡宮)で元服させて、大菩薩(八幡大菩薩)の烏帽子子にして、兄を八幡六郎、弟を八幡と名付けました。このことがやがて天下の口遊み([噂])となって、将軍(室町幕府第二代将軍、足利義詮よしあきら。足利尊氏の嫡男)はこれを聞いて、「これは当家の累祖伊予守頼義(源頼義)が三人の子を八幡太郎(源義家よしいへ)・賀茂次郎(源義綱よしつな・新羅三郎(源義光よしみつ)と名付けたのと同じであろう。心中では必ずや天下を奪う算段をしておろう」と誤解を生みました。


続く


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by santalab | 2015-12-26 10:20 | 太平記 | Comments(0)

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