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「太平記」清氏反逆事付相摸守子息元服事(その10)

仁木中務なかつかさ少輔せう・細河大夫将監しやうげん二人ににんは、京に落ち留まりぬ。相従あひしたがふ勢次第に減じぬと見へけるに、辺土洛外の郎等らうどうども、少々路に追ひ付きて、「将軍の御勢は、わづかに五百騎に足らずとこそ承り候ふに、などやこの大勢にて都をば落ちさせ給ひ候ふやらん」と申せば、相摸の守馬を控へて、「元より将軍に向かひ奉て、合戦をすべき身にてだにあらば、臆病第一の取り集め勢四五百騎わななき居たるを、清氏物の数とや思ふべし。君臣の道死すれども上にさかへざる義を思ふゆゑに、一間ども落ちてや陳じ申すと存じて、言ふ甲斐なきていを人に見へつる悲しさよ。身不肖ふせうなれば、罪なく討たれ参らすとも世の為に惜しむべき命にあらず。ただざん人事を乱つて、将軍天下を失はせ給はんずるを、草の陰にても見聞かん事こそ悲しけれ」とて、両眼に涙を浮かべ給へば、相従ふつはものども、皆鎧の袖をぞ濡らしける。




仁木中務少輔(仁木国行?)・細川大夫将監(細川家氏いへうぢ)二人は、京に残りました。相従う勢は次第に減るように見えましたが、辺土洛外の郎等([家来])どもが、少々路中で追い付いて、「将軍(室町幕府第二代将軍、足利義詮よしあきら。足利尊氏の嫡男)の勢は、わずかに五百騎に足らずと聞いておりますのに、どうしてこの大勢で都を落ちられますや」と申せば、相摸守(細川清氏きようぢ)は馬を控えて、「元より将軍に向かって、合戦をするつもりなら、臆病第一の取り集め勢四五百騎を、この清氏が物の数と思うはずもない。君臣の道は閉ざされたが上を諌める義を思い、一旦は落ちて陳じ申すべきと存じて、情けない有様を人に見られるとは悲しいことよ。不肖の身であれば、罪なく討たれたところで世のために惜しむ命でもない。ただ讒人が世を乱し、将軍室町幕府第二代将軍、足利義詮よしあきら。足利尊氏の嫡男)が天下を失うことを、たとえ草葉の陰でさえ見聞きすることが悲しいのだ」と申して、両眼に涙を浮かべれば、従う兵どもも、皆鎧の袖を濡らしました。


続く


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by santalab | 2015-12-27 10:02 | 太平記 | Comments(0)

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