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「太平記」笠置軍事付陶山小見山夜討事(その6)

ここにて一息休めて城のうちをきつと見上げければ、錦の御旗に日月じつげつを金銀にて打つて付けたるが、白日に耀かかやいて光り渡りたるその陰に、透き間もなく鎧ふたる武者三千余人、兜の星を耀かし、よろひの袖を連ねて、雲霞うんかの如くに並居なみゐたり。その外櫓のうへ矢間さまの陰には、射手と思しき者ども、弓のつる食ひ湿しめし、矢束ね解いて押しくつろげ、中差しに鼻油引いて待ち懸けたり。そのいきほひ決然として、敢へて可攻やうぞなき。寄せ手一万余騎これを見て、すすまんとするも不叶、引かんとするも不協して、心ならず支へたり。




ここで一息休めて城の中を見上げると、日月を金銀で打って付けた錦の旗が、白日([明るく輝く太陽])に耀いて光り渡るその陰に、透き間もなく鎧を身に纏った武者三千余人が、兜の星を耀かし、鎧の袖を連ねて、雲霞の如く立ち並んでいました。そのほか櫓の上、矢間([矢狭間やざま]=[城の塀や櫓・軍船の胴壁などに設けた、中から矢を射るための穴])の陰には、射手と思われる者どもが、弓の弦を湿らせ、矢束を解いて押し広げ、中差し([征矢])に鼻油を引いて待ち構えていました。その勢いは決然([思い切った様])として、攻める隙もありませんでした。寄せ手一万余騎はこれを見て、進むに進めず、引くにも引けずに、心ならず構えました。


続く


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by santalab | 2016-01-17 09:01 | 太平記 | Comments(0)

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