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「太平記」笠置軍事付陶山小見山夜討事(その18)

陶山すやま・小見山城をまはり、四方しはうの陣をば早や見澄ましつ。皇居くわうきよはいづくやらんと伺うて、本堂ほんだうの方へ行くところに、ある役所の者これを聞き付けて、「夜中やちゆう大勢おほぜいの足音して、潛かにとほるは怪しきものかな、誰人たれびとぞ」と問ひければ、陶山の吉次よしつぐ取りも敢へず、「これは大和勢にて候ふが、今夜こよひ余りに雨風烈しくして、物騒がしく候ふあひだ、夜討ちや忍び入り候はんずらんと存じさふらひて、夜まはり仕り候ふなり」と答へければ、「げに」と云ふ音して、また問ふ事もなかりけり。これより後は中々忍びたるていもなくして、「面々の御ぢんに、御用心候へ」と高らかに呼ばはつて、閑々しづしづと本堂へ上りて見れば、ここぞ皇居くわうきよと思えて、蝋燭らふそく数多所あまたところに被燃て、振鈴の声幽かなり。




陶山(陶山義高よしたか)・小見山(小見山次郎)は城を廻り、四方の陣をすべて確認しました。皇居は何処であろと窺いながら、本堂の方へ行くところに、ある役所([戦陣で、将士が本拠としている所])の者はこれを聞き付けて、「夜中に大勢の足音がして、忍んで通るとは何とも怪しい、誰人だ」と訊ねると、陶山吉次はすかさず、「これは大和勢でございますが、今夜はあまりに雨風が激しくて、物騒がしくございますれば、夜討ちや忍び入りがないとも知れませんので、候はんずらんと存じさふらひて、夜廻りしてります」と答えると、「そうか」と言う声がして、再び訊ねることはありませんでした。この後は忍んだ様子もなくて、「面々の陣でも、用心なさいませ」と声高らかに叫んで、静かに本堂に上って見れば、ここが皇居と思われて、蝋燭があちらこちらで燃やされて、振鈴の声がかすかに聞こえました。


続く


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by santalab | 2016-01-20 23:30 | 太平記 | Comments(0)

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