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「太平記」笠置軍事付陶山小見山夜討事(その19)

衣冠いくわん正しくしたる人、三四人さんしにん大床おほゆかに伺候して、警固の武士に、「誰か候ふ」と被尋ければ、「その国の某々なにがしそれがし」と名乗つて廻廊くわいらうにしかと並居なみゐたり。陶山すやま皇居くわうきよやうまで見澄まして、今はかうと思ひければ、鎮守の前にて一礼いちらいを致し、本堂のうへなる峯へ上つて、人もなきばうのありけるに火を懸けて同音に鬨の声を挙ぐ。四方しはうの寄せ手これを聞き、「すはや城中じやうちゆうかへり忠の者出で来て、火を懸けたるは。閧の声を合はせよや」とて追ふ手搦め手七万余騎、声々こゑごゑに閧を合はせてをめき叫ぶ。その声天地を響かして、如何なる須弥しゆみ八万由旬はちまんゆじゆんなりともくづれぬべくぞ聞こへける。




衣冠を正しくした人、三四人大床([寝殿造りで母屋もやの外側、簀子の内側にある細長い部屋])に伺候して、警固の武士に、「誰かおるか」と訊ねると、「その国の某々」と名乗って廻廊に並びました。陶山(陶山義高よしたか)は皇居の様子まで見届けて、これですべて見届けたと思い、鎮守の前で一礼し、本堂の上の峯に上って、人のいない僧坊があったので火を懸けて声を合わせて鬨の声を上げました。四方の寄せ手はこれを聞いて、「なんと城中に返り忠([主君に背いて敵方に通じること])の者が出て来て、火を懸けたぞ。閧の声を合わせよ」と追手([大手]=[敵の正面を攻撃する軍勢])搦め手([城の裏門や敵陣の後ろ側を攻める軍勢])七万余騎は、声々に閧を合わせて大声で叫びました。その声は天地を響かして、たとえ須弥([古代インドの世界観の中で中心にそびえる山])八万由旬(須弥山の高さ。一由旬=7.2km)であろうとも崩れると思われました。


続く


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by santalab | 2016-01-21 08:00 | 太平記 | Comments(0)

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