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「太平記」笠置軍事付陶山小見山夜討事(その20)

陶山すやま五十ごじふ余人のつはものども、城の案内は只今くはしく見置きたり。ここの役所に火を懸けてはかしこに鬨の声を上げ、かしこに鬨を作つてはここの櫓に火を懸け、四角八方に走りまはつて、その勢城中じやうちゆうに満ち満ちたるやうに聞こへければ、陣々堅めたる官軍くわんぐんども、城の内に敵の大勢おほぜい攻め入りたりと心得て、物の具を脱ぎ捨て弓矢をかなぐり棄てて、がけ堀とも不謂、たふまろびてぞ落ち行きける。錦織にしこり判官代はんぐわんだいこれを見て、「きたなき人々の振る舞ひかな。十善じふぜんの君に被憑まゐらせて、武家を敵に受くるほどの者どもが、敵大勢なればとて、戦はで逃ぐるやうやある、いつの為に可惜命ぞ」とて、向かふ敵に走り懸かり走り懸かり、おほ肌脱ぎに成つて戦ひけるが、矢種を射尽くし、太刀を打ちりければ、父子二人ににん並びに郎等十三人、各々腹掻き切つて同じ枕に伏して死ににけり。




陶山(陶山義高よしたか)の五十余人の兵どもは、城の案内を詳しく確認していました。ここの役所([戦陣で、将士が本拠としている所])に火を懸けてはかしこに鬨の声を上げ、かしこに鬨を作ってはここの櫓に火を懸け、四方八方に走り廻って、その勢は城中に満ち満ちているように聞こえたので、陣々を固めていた官軍どもは、城の内に敵が大勢攻め入ったと思い、物の具([武具])を脱ぎ捨て弓矢をかなぐり捨てて、崖堀も構わず、倒れ転びながら落ちて行きました。錦織判官代はこれを見て、「なんという人々の振る舞いよ。十善の君(第九十六代後醍醐天皇)に頼み参らせて、武家を敵にするほどの者どもが、敵が大勢だからといって、戦わずに逃げるとはどういうことか、何のために命を惜しむのだ」と申して、向かう敵に走り懸かり走り懸かり、大肌脱ぎ([上半身の衣服を全部脱いで裸になること])になって戦いましたが、矢種を射尽くし、太刀を打ち折って、父子二人ならびに郎等([家来])十三人は、各々腹を掻き切って同じ枕に臥して死にました。


続く


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by santalab | 2016-01-21 12:44 | 太平記 | Comments(0)

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