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「太平記」大仏貞直並金沢貞将討死の事(その1)

さるほどに、大仏陸奥のかみ貞直さだなほは、昨日まで二万余騎にて、極楽寺の切通きりどほしを支へて防ぎ戦ひ給ひけるが、今朝こんてうの浜の合戦に、三百余騎に討ち成され、あまつさへ敵に後ろを被遮て、前後に度を失うておはしましけるところに、鎌倉殿の御屋形にも火懸かりぬと見へしかば、世の中今はさてとや思ひけん、また主の自害をや勧めけん、宗との郎従らうじゆう三十さんじふ余人、白州の上に物の具脱ぎ捨てて、一面に並居なみゐて腹をぞ切りにける。貞直これを見給ひて、「日本一につぽんいちの不覚の者どもの振る舞ひかな。千騎が一騎に成るまでも、敵を亡ぼし名を後代こうだいに残すこそ、勇士の本意とするところなれ。いでさらば最後の一合戦ひとかつせん快うして、兵の義を勧めん」とて、二百余騎の兵を相従あひしたがへ、先づ大島おほしま・里見・額田ぬかだ桃井もものゐ、六千余騎にて控へたる真ん中へ破つて入り、思ふほど戦つて、敵数多あまた討ち取つて、ばつと駆け出で見給へば、その勢わづかに六十ろくじふ余騎に成りにけり。




やがて、大仏陸奥守貞直(北条貞直=大仏貞直)は、昨日までは二万余騎で、極楽寺(現神奈川県鎌倉市にある寺)の切通しを支えて防ぎ戦っていましたが、今朝の浜の合戦で、三百余騎に討ちなされ、その上敵に後ろをさえぎられて、前後ともにうろたえていましたが、鎌倉殿(源頼朝)の屋形にも火がかけられたと見て、世の中は今はこれまでと思ったのか、また主(大仏貞直)に自害を勧めるためか、主な郎従([家来])三十余人が、白州([白い砂の州])の上に物の具([武具])を脱ぎ捨てて、一面に並んで腹を切りました。(大仏)貞直はこれを見て、「日本一の臆病者どもよの。たとえ千騎が一騎になるまでも、敵を亡ぼし名を後代に残すことが、勇士の本意とするところではないか。さあ最後の一合戦を思う通りなして、兵の義をまっとうしようではないか」と申して、二百余騎の兵を引き連れて、まず大島・里見・額田・桃井、六千余騎にて控える真ん中を割って駆け入り、思うままに戦って、敵を数多く討ち取り、駆け出て見れば、その勢ははずか六十余騎になりました。


続く


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by santalab | 2016-01-24 07:37 | 太平記 | Comments(0)

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