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「太平記」一宮並妙法院二品親王の御事(その3)

一の宮御返事、

明日よりは 跡なき波に 迷ふとも 通ふ心よ しるべともなれ

配所はともに四国と聞こゆれば、せめては同じ国にてもあれかし。事問ふ風の便りにも、憂きを慰む一節とも念じ思し召しけるも叶はで、一の宮はたゆたふ波に漕がれ行く、身を浮舟に任せつつ、土佐の畑へ赴かせ給へば、有井ありゐ三郎左衛門さぶらうざゑもんじようたちかたはらに、一室を構へて置き奉る。かのはたまうすは、南は山のそばにて高く、北は海辺かいへんにて下がれり、松の下露したつゆとぼそに懸かりて、いとど御袖のなみだを添へ、磯打つ波の音御枕の下に聞こへて、これのみ通ふ故郷ふるさとの、夢路ゆめぢも遠く成りにけり。




一の宮(尊良たかよし親王)から返事には、

明日からは跡を残さぬ波に心迷うとも、心ばかりは通い合うと信じよ。

配所はともに四国と聞こえたので、せめて同じく国であればと思いました。風の便りにも、悲しみを慰める一端ともなれと思われましたがそれも叶わず、一の宮は揺れる波の上を漕がれて行きました、その身を浮舟に任せて、土佐の幡多に赴けば、有井三郎左衛門尉(有井豊高とよたか)の館のそばに、一室を構えて据え置かれました。幡多と申す所は、南は山傍で高く、北は海辺で下っていました、松の下露が扉にかかり、いっそう袖の涙を誘い、磯打つ波の音が枕の下に聞こえて、故郷を思う、夢路さえ遠くなるのでした。


続く


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by santalab | 2016-01-26 08:24 | 太平記 | Comments(0)

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