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「太平記」俊明極参内の事(その2)

時に勅問あつていはく、「桟山航海得々として来たる。和尚をしやう以何度生どしやうせん」。禅師答へて云はく、「以仏法緊要処度生せん」。重ねていはく、「正当しやうたう恁麼いんもの時いかん」。答へていはく、「天上てんじやうに有星、皆拱北。人間無水不朝東」。御法談ほふだんをはつて、禅師拝揖はいいふして被退出。翌日別当実世さねよきやうを勅使にて禅師号を被下る。時に禅師向勅使、「この君雖有亢竜悔、再び帝位ていゐを踏ませ給ふべき御さうあり」とぞ被申ける。今君為武臣とらはれて亢竜かうりようの悔いに合はせ給ひけれども、かの禅師の相しまうしたりし事なれば再び九五きうごの帝位を踏ませ給はん事、無疑思し召すに依つて、法体ほつたいの御事は暫くあるまじき由を、強ひて被仰出でけり。




この時勅問されて、「困難な航海を乗り越えてよくぞ我が朝にやって来られた。和尚よどうすれば浄土に生まれることができるのだ」。禅師は答えていわく、「仏法を崇めれば浄土に生まれることができましょう」。重ねて訊ねられて、「何故そう思うのじゃ」。禅師は答えていわく、「天上に星あり、人は皆北に向かって手を合わせます。また東に流れない水はありません」(説明するまでもないとの意?)。法談が終わり、禅師は拝揖([朝廷や神道における敬礼動作])して内裏を退出しました。翌日別当実世卿(洞院実世)を勅使にして禅師に尊号を下されました。時に禅師が勅使に向かって、「この君(第九十六代後醍醐天皇)は有亢竜悔([高い地位を持っている人や、多くの財産を持っている人は、慎みを持って行動しなければ、失敗して悔いることになるという戒め])の相がございますが、再び帝位に即かれる相を持っておられます」と申しました。今君は武臣に囚われて亢竜の悔い([天に昇りつめた竜は、あとは 下るだけになるので悔いがある。栄達を極めた者は、必ず衰えるというたとえ])に遭われておられましたが、かの禅師(俊明極しゆんみんき)が申したことですれb再び九五([天子の位])に即かれることは、疑いないと思われて、後醍醐天皇は法体([仏門に入って髪を剃り法衣を着た出家の姿。僧体])になるつもりはないと、強ちに拒まれました。


続く


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by santalab | 2016-01-26 12:49 | 太平記 | Comments(0)

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