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「太平記」薩多山合戦の事(その3)

かの薩埵山とまうすは、三方さんぱう嶮岨けんそにて谷深く切れ、一方は海にて岸高くそばだてり。敵たとひ何万騎ありとも、難近付とは見へながら、取り巻く寄せ手は五十万騎ごじふまんぎ、防ぐ兵三千余騎、しかも馬疲れかてとぼしければ、いつまでかその山にこらへ給ふべきと、哀れなる様に思えて、たなごころに入れたる心地しければ、強ち急に攻め落とさんともせず、ただ千重せんぢゆう万重に取り巻いたる許りにて、未だ矢軍をだにもせざりけり。




薩埵山と申すのは、三方は嶮岨([地勢が険しい様])で谷は深く、一方は海で岸高く切り立っていました。敵がたとえ何万騎あろうとも、近付き難しと思われましたが、取り巻く寄せ手は五十万騎、一方防ぐ兵は三千余騎、しかも馬は疲れて粮も乏しく、いつまでかその山に堪えることができるかと、哀れに思えました、(足利直義ただよしは)勝ったと同じと思い、急に攻め落とすこともなく、ただ千重万重に取り巻くばかりで、矢軍さえも仕掛けませんでした。


続く


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by santalab | 2016-01-30 16:27 | 太平記 | Comments(0)

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