Santa Lab's Blog


「太平記」薩多山合戦の事(その6)

これを見て門出悪しとや思ひけん、道にて馳せ付きつる勢ども一騎も不残落ち失せて、始め宇都宮にて一味同心せし勢許りに成りければ、わづかに七百騎にも不足けり。かくては如何があらんと諸人色を失ひけるを、薬師寺入道暫く思案して、「吉凶は如糾索いへり。これは何様宇都宮の大明神だいみやうじん、大将を氏子にさづけ給はん為に、斯かる事は出で来るなり。暫くも御逗留とうりう不可有」とまうしければ、諸人げにもと気をなほして路に少しのとどこほりもなく、引き懸け引き懸け打つほどに、同じき十九日の午の刻に、戸禰河とねがはを打ち渡つて、那和なわしやうに着きにけり。




これを見て門出が悪いと思ったか、道中で馳せ付いた勢どもは一騎も残らず落ち失せて、はじめ宇都宮で一味同心した勢ばかりになって、わずか七百騎にも足りませんでした。こうなってはどうにもならぬと諸人は色を失いましたが、薬師寺入道はしばらく思案して、「吉凶は糾える縄の如し([禍福は糾える縄の如し]=[幸福と不幸は、より合わせた縄のように交互にやってくるということ])というぞ。これはきっと宇都宮大明神(現栃木県宇都宮市にある宇都宮二荒山ふたあらやま神社の祭神)が、大将を氏子(氏子周綱ちかつな)に授けるために、この事が起こったのであろう。しばらくも逗留あるべからず」と申したので、諸人はなるほどと気を取り直し道中留まることなく、引き駆け引き駆け鞭打つほどに、同じ十二月十九日の午の刻([午前十二時頃])に、利根川を打ち渡り、那波庄(現群馬県伊勢崎市)に着きました。


続く


[PR]
by santalab | 2016-01-30 16:38 | 太平記 | Comments(0)

<< 「太平記」薩多山合戦の事(その7)      「太平記」薩多山合戦の事(その5) >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
最新のコメント
ただおし出づるままに の..
by SiNa at 21:40
「義経記」の御紹介記事を..
by Magohati38 at 02:04
すばらしいサイト おかげ..
by johsei1129 at 23:54
青き花咲く大地 気高き..
by 北朝鮮の水爆に十神山も激怒 at 02:50
全然現代語訳できてない
by あ at 02:04
 その島根県(旧出雲国東..
by 民俗学者 at 23:34
うーん、松島からまた仙台..
by 五十嵐洋(秋田県大館市) at 00:51
「下野の室の八嶋にて待て..
by 八島 守 at 12:03
ひょんな事から、このブロ..
by yoshy at 18:50
すみません、日本語の起源..
by 春日 at 21:17
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧