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「太平記」正成兄弟討死事(その1)

楠木判官正成まさしげ、舎弟帯刀たてはき正季まさすゑに向かつてまうしけるは、「敵前後をさへぎつて御方は陣を隔てたり。今は遁れぬところと思ゆるぞ。いざや先づ前なる敵を一散らし追ひ捲つて後ろなる敵に戦はん」と申しければ、正季、「しかるべく思え候ふ」と同じて、七百余騎を前後に立てて、大勢の中へ駆け入りける。左馬のかみつはものども、菊水きくすゐの旗を見て、よき敵なりと思ひければ、取り籠めてこれを討たんとしけれども、正成・正季、東より西へ割つてとほり、北より南へ追ひ靡け、よき敵と見るをば馳せ並べて、組んで落ちては首を捕り、合はぬ敵と思ふをば、一太刀打つて駆け散らす。正季と正成と、七度合ひ七度分かる。その心ひとへに左馬の頭に近付き、組んで討たんと思ふにあり。遂に左馬の頭の五十万騎ごじふまんぎ、楠木が七百余騎に駆け靡けられて、また須磨の上野うへのの方へぞ引つかへしける。




楠木判官正成(楠木正成)が、弟の帯刀正季(楠木正季)に向かって申すには、「敵に前後を遮られて味方の陣を分けられた。今はとても逃れられぬと思える。ならばまず前の敵を一散らし追いまくり後ろの敵と戦おうではないか」と申せば、正季は、「それがよろしいでしょう」と同意して、七百余騎を前後に立てて、大勢の中に駆け入りました。左馬頭(足利直義ただよし。足利尊氏の同母弟)の兵どもは、菊水の旗を見て、よい敵と思い、取り込めて討とうとしましたが、正成・正季が、東より西へ割って通り、北より南へ追い散らし、よい敵と見れば馳せ並べて、組んで落ちては首を捕り、これと思わぬ敵には、一太刀打って駆け散らしました。正季と正成は、七度合い七度分かれました。その心はひとえに左馬頭(足利直義)に近付き、組んで討つことでした。遂に左馬頭の五十万騎は、楠木の七百余騎に駆け散らされて、また須磨上野(現神戸市須磨区妙法寺上野路)の方へ引き返しました。


続く


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by santalab | 2016-02-08 19:36 | 太平記 | Comments(0)

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